Press

IoTおよびSmart Industryの技術革新を加速させる、Linux対応のSTM32MP1マイクロプロセッサを発表

・長期供給保証(10年間以上)の対象となるマイクロプロセッサ ・消費電力に制約のあるリアルタイム・サブシステムとオープンソース・ソフトウェアを使用したアプリケーションに最適なマルチコア・アーキテクチャ ・OpenSTLinuxとSTM32Cubeエコシステムが開発期間を短縮

2019年2月20日

多種多様な電子機器に半導体を提供する世界的半導体メーカーの
STマイクロエレクトロニクス(NYSE:STM、以下ST)は、マルチコア・マイクロプロセッサ(MPU)であるSTM32MP1シリーズを発表しました。STは、より高い性能、多くのリソース、大規模なオープンソース・ソフトウェアが求められるアプリケーションに対応するため、Arm® Cortex®に関する専門性を活用し、業界をリードするSTM32ファミリの可能性をさらに広げています。同製品は、高速演算およびグラフィックス処理に対応すると共に、電力効率の高いリアルタイム制御を備えた高集積のマイクロプロセッサで、産業機器、コンスーマ機器、スマート・ホーム、ヘルスケア分野の高度なソリューションの開発を加速させます。

STM32MP1は、STおよびパートナー各社が提供する充実したSTM32* 開発エコシステム(各種ツールおよび技術サポートを含む)によりサポートされます。さらに、オープンソースのLinuxのディストリビューションであるOpenSTLinuxのリリースにより、STM32ファミリの適用範囲が拡大され、消費電力に制約のあるリアルタイム・アプリケーションを開発するユーザの要件をサポートできるようになります。また、STM32MP1は、STの10年間の長期供給保証の対象となっており、このマイクロプロセッサと上記のエコシステムを組み合わせることで、製品寿命の長い産業機器およびプロフェッショナル機器のあらゆる要件に対応します。

STのマイクロコントローラ事業部ジェネラル・マネージャであるRicardo De Sa Earpは、次のようにコメントしています。「STM32MP1は、電力効率の高いリアルタイム制御と高い集積度により、STM32の優位性をマイクロプロセッサの高速演算 / グラフィックス機能を必要とする用途に活用します。オープンソースのLinuxソフトウェアとマイコンの開発サポートを統合する当社の取り組みと、コンスーマ機器向け製品では見られない長期供給保証により、マイクロプロセッサを使用した組込みシステムのプロジェクトにおいて、高い信頼性を確保しています。」

STM32MP1は、Arm® Cortex®-AプロセッサとCortex®-Mプロセッサを組み合わせた、STM32の新しいヘテロジニアス・アーキテクチャにより、これまでの範囲を超えたアプリケーションを開発することが可能です。この柔軟なアーキテクチャは、常に最高レベルの電力効率を維持しつつ、高速処理やリアルタイム処理をシングル・チップで実行できます。例えば、Cortex-A7の動作を停止し、効率の良いCortex-M4のみを動作させることで、消費電力を25%まで抑えることができます(標準値)。また、この状態からスタンバイ状態に切り替えれば、消費電力をさらに1/2500に削減できる上、Linuxの動作の再開にはアプリケーションにより異なるものの、1~3秒しかかかりません。

STM32MP1は、3Dグラフィックス・プロセッサ・ユニット(GPU)を搭載しており、高度なグラフィックを備えたヒューマン・マシン・インタフェース(HMI)をサポートします。また、外付けのDDR SDRAMおよびFlashメモリも幅広くサポートされています。さらに、充実したペリフェラルも搭載されており、Cortex-A / LinuxとCortex-M / リアルタイム処理のいずれかにシームレスに割り当てることができます。同製品は、基板コストと基板面積を最小限に抑えるように最適化された多様なBGAパッケージで提供されます。

STは、ソフトウェア開発を加速させるため、オープンソースの主力であるLinuxのディストリビューションであるOpenSTLinuxをリリースしました。OpenSTLinuxはすでに、LinuxコミュニティのLinux Foundation、Yocto project®、およびLinaroによってレビューされ、承諾されています。このディストリビューションには、アプリケーション・プロセッサ・コアでソフトウェアを実行するために必要な構成要素がすべて含まれています。

拡張されたSTM32Cubeツールは、Cortex-M搭載マイコン用のSTM32Cubeパッケージから特別にアップグレードされており、Arm Cortex-Aコア搭載マイクロプロセッサの開発を迅速に進めるために必要な機能をすべて備えています。STのソリューションは、マイクロプロセッサを採用したプロジェクトのセットアップと内蔵リソースの設定を簡略化します。

STM32MP1は現在量産中で、大量購入時の単価は約4.84ドルです。同製品は、2019年3月以降に販売代理店から入手可能となる予定です。詳細については、STの販売代理店にお問い合わせいただくか、www.stmcu.jp/stm32/stm32mp1/をご覧ください。

また、2種類の評価ボード(STM32MP157A-EV1STM32MP157C-EV1)および2種類の開発キット(STM32MP157A-DK1STM32MP157C-DK2)が、2019年4月以降に販売代理店から入手可能になる予定です。

技術情報
STM32MP1シリーズは、デュアル・コアのArm Cortex-A7アプリケーション・プロセッサ(動作周波数:650MHz)および高性能Arm Cortex-M4コア(動作周波数:209MHz)で構成されています。STM32MP1は、コスト効率に優れた各種DDR SDRAM(DDR3、DDR3L、LPDDR2、LPDDR3(32/16bit、533MHz)など)をサポートしており、これによりマイクロプロセッサ・システムの性能や帯域幅の課題を解決することができます。さらに同製品は幅広いFlashメモリ(eMMC、SDカード、SLC NAND、SPI NAND、Quad-SPI NOR)にも対応しています。

3Dグラフィックス・プロセッサ・ユニット(GPU)は、OpenGL® ES 2.0インタフェースとLinuxおよびAndroid、Qtなどの多様なアプリケーション・フレームワークのネイティブ・サポートをベースとした先進的なHMI開発にも対応します。STM32MP1は、パラレル24bit RGBディスプレイ(最大解像度:WXGA、60fps)および2データ・レーンMIPI® DSI(1Gbps)をサポートします。

この3D GPUにより、産業用制御パネルのような装置の操作性を向上させることができます。ユーザ・インタフェース・ツール・パッケージのStoryboard™を開発するCrank Software社の社長であるBrian Edmond氏は、次のようにコメントしています。「STM32MP1プラットフォームはSTのソリューションを強化すると共に、Storyboardの業界をリードする拡張性にも最適です。Vivante®の強力な3D GPUにより、Storyboardのユーザは、現在の組込みシステムに求められる豊富なグラフィックス機能を実現することができます。」

さらにSTは、STM32MP1にAndroidを移植するためWitekio社と協力しました。Witekio社の会長であるYannick Chammings氏は、次のようにコメントしています。「Witekioは、STM32MP1へのAndroid移植について、STと協力できることを誇りに思います。当社はシステム・ソフトウェア・インテグレータとして、STの顧客の革新的なIoTプロジェクトをサポートするため、LinuxやAndroidでのカスタマイズからQt HMI開発およびクラウド接続まで、STM32MP1をベースとした総合的なソフトウェア・システムの開発を進めています。」

STM32MP1には、ユーザが作成するコードの信頼性を完全なものとするため、TrustZone、暗号化、ハッシュ、セキュア・ブート、タンパ検出ピン、リアル・タイム・クロックなどのハードウェア・セキュリティ機能が組み込まれています。

また、STM32MP1には、STM32マイコンの先進的なIPが活用されています。STM32MP1には、USB2.0(3チャネル、ハイスピード2チャネルを含む)、ギガビット・イーサネットGMAC(1チャネル)、CAN FD(2チャネル)、および標準的な I²C、UART、SPIなど、37チャネルの通信インタフェースが搭載されています。また、16bit ADコンバータ(2個)、12bit DAコンバータ(2個)、内蔵LDOなど、多彩なアナログ・ペリフェラルも搭載しています。さらに、タイマ(29ユニット)とウォッチドッグ(3ユニット)もサポートします。パッケージにより異なりますが、最高で176本のGPIOもサポートすることができます。

STは、チップセットとして、専用の電源制御用IC(PMIC)であるSTPMIC1を開発しました。このPMICには、DC-DCバック・コンバータ(4個)、LDO(6個)、DC-DCブースト・コンバータ(1個)、およびUSB VBUSと汎用電源スイッチが集積されています。そのため、省スペース化と部品点数削減を実現し、STM32MP1と基板上のその他の部品に必要なすべての電源レールを確保しています。さらに、消費電力の最適化により、STPMIC1は、バッテリ駆動機器においてもSTM32MP1の理想的なコンパニオン・チップになります。

OpenSTLinuxは、STM32MP1のCortex-A7コアでの開発をサポートしており、Linux BSP、カーネル、ドライバ、ブート・チェーン、セキュアOS(OP-TEE:Trusted Execution Environment)など、重要な要素で構成されています。

プロジェクトの段階に応じた最適な開発をサポートするため、3種類の開発者向けソフトウェア・パッケージが提供されています。

・ スタータ・パッケージ(STM32MP1Starter) – STM32MP1を使用したシステム開発を簡単に始められるパッケージ
・ ディベロッパ・パッケージ(STM32MP1Dev) – STM32MP1組込みソフトウェア・ディストリビューション上に開発資産を追加するパッケージ
・ ディストリビューション・パッケージ(STM32MP1Distrib) – 独自のLinux®ディストリビューション、スタータ・パッケージ、ディベロッパ・パッケージを作成できるパッケージ

STは、STM32MP1を使用したLinuxベースのセキュアな製品を迅速に開発できるよう、オープンソース・ソフトウェアのプロバイダであるTimesys社とも協力しています。Timesys社の最高経営責任者(CEO)であるAtul Bansal氏は次のようにコメントしています。「STM32MP1シリーズについてSTと協力し、よりセキュアなLinuxベースの製品を迅速に開発するために必要なツールを提供できることを嬉しく思います。STM32MP1での主力のYocto BSPとmeta-timesysの統合に対するSTの投資により、ユーザは脆弱性管理に費やす時間を大幅に削減することができます。」

STM32CubeMP1のファームウェア・パッケージも含め、充実したソフトウェア・サポートに向けた取り組みも、STM32MP1の特徴です。STM32CubeMXでは、Cortex-A7とCortex-M4の両方のソフトウェア設定およびハードウェア設定を簡単に行うことができます。また、Cortex-M4、DDR SDRAMインタフェース設定、およびチューニング・ツールのC言語コード生成にも対応しています。Linuxデバイス・ツリーの生成も可能です。

さらに、開発コミュニティや、パートナー製のSOM(システム・オン・モジュール)ボードも提供されています。

STM32MP1に関するブログ記事は、https://blog.st.com/stm32m1-mpu-stm32mp157a-ev1-stm32mp157c-dk2/ でご覧いただけます。

* STM32は、STMicroelectronics International NVもしくはEUおよび / またはその他の地域における関連会社の登録商標および / または未登録商標です。STM32は米国特許商標庁に登録されています。